ステロイド治療
ステロイド薬とは
ステロイド薬は、副腎という腎臓の上にある臓器の副腎皮質という器官で作られるホルモン(副腎皮質ホルモン)のうち、糖質コルチコイドという成分を人工的に作った薬です。
免疫による炎症をしずめることから、アトピー性皮膚炎や気管支喘息など様々な病気に使用され、免疫を抑える作用もあるので重症筋無力症や膠原病などの自己免疫疾患に対しても広く使用されます。一部のステロイド薬はMG に対しては使用できません。
- 腎臓の上にのっている小さな臓器が副腎です。
副腎は皮質(副腎皮質)と髄質(副腎髄質)で構成されています。
経口ステロイド薬(飲み薬)
重症筋無力症の患者さんには免疫システムを抑える薬が有効です。現在、治療の柱となっているのが、「経口ステロイド薬」、つまりステロイドの服用です。過剰な免疫反応を抑え、神経から筋肉への伝達をスムーズにします。早期から免疫抑制薬などと組み合わせる方法も用いられています。
経口ステロイドは治療の柱となりますが、糖尿病の誘発・増悪、骨粗しょう症、消化性潰瘍、白内障、ステロイド精神病、不眠、体重増加、顔が丸くむくむ(ムーンフェイス)、多毛、食欲亢進、月経異常などの副作用がおこることがあります。治療は、少ない用量からスタートし、副作用の症状が出ているかどうか、こまめに確認しながら行います。この飲み薬は急な減量・中止により症状が悪化することがあります。自己判断で減量・中止してはいけません。また、治療期間中、生ワクチン(風疹、水痘、おたふくかぜなど)の接種は受けられません。気になることがありましたら、すぐに担当医に相談しましょう。
重症筋無力症の治療の目標は、軽微な筋無力症状は存在してもさほど生活の支障とはならない程度まで改善させること(MM)です。1日の経口ステロイド量を5mg以下にすることも目標とされており、これをMM-5mgと呼びます。重症筋無力症の診療ガイドラインにもMM-5mgを早期達成できるように考えることが記載されています。
小児
小児の全身型重症筋無力症では、経口ステロイド薬が最初に選択されます。しかし、小児期は成長や免疫獲得に重要な時期ですが、ステロイドは成長障害や易感染性の副作用のおそれがあります。したがって、他の治療との組み合わせなどにより、いかにステロイドの使用量を少なくするかが重要となります。加えて、治療期間中は生ワクチン(風疹、水痘、おたふくなど)の接種が受けられませんので、治療にあたっては担当医に相談してください。
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ステロイドパルス療法
ステロイドを短期間に多量投与する治療法です。治療は点滴にて行われます。後述する免疫グロブリン静注療法(IVIg)や血液浄化療法と並び、短期に症状を改善する選択肢の1つで、経口ステロイドを減らせることも期待されます。
参考文献
- 日本神経学会監修 重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン