補体阻害薬
補体阻害薬
補体阻害薬は、2017年から全身型の重症筋無力症への使用が可能になりました。抗アセチルコリン受容体抗体陽性の全身型の患者さんに有効な治療法で、免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)や血液浄化療法を含む複数の治療でも効果がみられなかったり、副作用などから治療を続けられなかった方などに、使用することができます。現在、このような深刻な症状に苦しむ方が重症筋無力症患者さん全体の5~10%いらっしゃいます。そのような患者さんにも効果が期待できます。
補体阻害薬を投与することにより、髄膜炎菌など特定の種類の細菌に感染しやすくなる可能性があるため、髄膜炎菌ワクチンの接種が必要です。
小児
一部の補体阻害薬が小児でも使用できるようになりました。
- 体がもともと持っている免疫システムの1つに「補体系」があります。抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性重症筋無力症患者さんでは、抗アセチルコリン受容体抗体(抗AChR抗体)が、ある特定の補体とくっついて補体系を活性化させ、神経と筋肉のつなぎ目を壊してしまいます。
- 補体阻害薬は、活性化している補体の一部に結合して、その活動を止めることで、神経と筋肉のつなぎ目が破壊されるのを防ぎます。
- ACh(アセチルコリン)
脳からの命令を筋肉へ伝える物質
- AChR(アセチルコリン受容体)
筋肉側でアセチルコリンを受け取る
- 抗AChR抗体(抗アセチルコリン受容体抗体)
アセチルコリン受容体にくっつく自己抗体
- 補体
身体を守る免疫システムの1つ
参考文献
- Conti-Fine BM, et al. J Clin Invest. ;116(11):2843-2854.
- Kusner LL, Kaminski HJ. Ann N Y Acad Sci. ;1274(1):127-132.
- Engel AG, et al. Neurol. ;27(4):307-315.
- Sahashi K, et al. J Neuropathol Exp Neurol. :39(2):160-172.