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監修: 脳神経内科 千葉 川口 直樹 先生
市立宇和島病院 小児科 林 正俊 先生

講演1
「重症筋無力症の最近のトピックス」

講演1
「重症筋無力症の最近のトピックス」

大阪大学大学院医学系研究科 教授 髙橋正紀先生

・重症筋無力症の最近の話題
1.治療の目標、戦略
いろいろな治療法の出現により、重症筋無力症患者の生命予後は改善されてはいますが、病気による患者さんへの負担は、かなり大きい疾患であります。
身体的障害による負担だけではなく、周囲の理解や共感が得られない、就労や社会参加の機会を損失するなど、さまざまな障害が追い打ちとなって患者さんの負担が増し、QOL (生活の質)が低下していることがわかってきました。
そのため、命を救うという治療目標ではなく、患者さんの負担を軽減し、継続的に社会に参加できるなど、患者さんの満足度の得られるような治療目標が推奨されています。
新たな治療戦略としては、ステロイドパルス療法や、ガンマグロブリンの大量療法1、血漿浄化療法といった強力な治療を早期から行うことで、症状を早期に改善することが提唱されており、同時に経口副腎皮質ステロイド2だけではなく、カルシニューリン阻害薬などの免疫調整薬3も早めに使って、ステロイド2の量を少量とすることが推奨されています。
具体的な治療目標としては、『重症筋無力症診療ガイドライン2014』において、患者さんが到達可能な治療目標として、「 minimal manifestations (MM4のカテゴリー」にあり、「経口副腎皮質ステロイドの1日服用量が5mg以下である状態」が推奨されています。

1一部のIVIg製剤は重症筋無力症に対する適応はありません
2一部のステロイドは重症筋無力症に対する適応はありません
3一部の免疫調整薬は重症筋無力症に対する適応はありません
4minimal manifestations:軽微症状

2.新しい治療
病気のメカニズムの中心になっている、タンパクなどを狙い撃ちにして効果を示すという生物学的製剤、あるいは分子標的製剤と呼ばれる治療薬が期待されています。



講演2
「みんなでやってみよう!重症筋無力症のリハビリテーション」

講演2
「みんなでやってみよう!重症筋無力症のリハビリテーション」

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
身体リハビリテーション部 理学療法主任 寄本恵輔先生

・重症筋無力症のリハビリテーションの目標
① 患者さんの身体的、心理的な機能を最大化し、QOLを維持すること。
② 二次的な合併症を予防すること
③ 患者さんが社会に溶け込めるように支援すること

・重症筋無力症のリハビリテーションのポイント
① 具合が悪い時に頑張らずに、症状がコントロールされているときに運動をする
② 効果的な治療にあわせてリハビリテーションを実施する
③ 反復した強度の高い運動は行わない
④ 体調に合わせて運動を維持する(夕方や疲れているときには行わない)。体調に合わせて運動を維持する。

次回8月の講座で紹介される予定の「座ってできる運動」に関しては、下記2次元コードでアクセス可能なYouTubeで解説されています。ご参考まで。