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監修: 脳神経内科 千葉 川口 直樹 先生
市立宇和島病院 小児科 林 正俊 先生

講演1
「重症筋無力症ってどんな病気?将来を見据えた診療の実際」

講演1
「賢い患者になるために」

聖マリアンナ医科大学 脳神経内科 櫻井 謙三 先生

● 重症筋無力症(MG)患者さんの症状、治療目標、治療のまとめ

  • MGの症状として瞼がさがる、物がダブって見える、飲み込みにくい、手足が重い、息が苦しいなどの症状があります。
  • 疾患による負担は身体的障害だけではなく、就労の困難や共感が得られないことによる孤独と不安など精神的負担も強いられます*1
  • 治療は急性期治療、維持療法、対症療法があります。
  • 治療のポイントには「早期から積極的な急性期治療を行うEFT(early fast-acting treatment;早期速効性治療)」と「経口ステロイド薬を5㎎/日以下で、MM以上を達成すること」があります*2
    『MM; minimal manifestations 軽微な筋力低下は存在するが、日常生活には支障がない状態』
  • 現在、経口ステロイド 5mg/日以下でのMM達成は約半数です*3
  • そこで治療目標として「長期機能予後の改善」「QOLの維持」を考えます。
  • 長期予後の改善には早期からの積極的な免疫治療が有効でありますが、薬剤は副作用がありますのでメリット、デメリットを考えましょう。
  • 経口ステロイドの課題として骨粗鬆症*4、糖尿病*5、満月様顔貌*6、気分障害*7などがあります。MGのQOLに関連する因子には、MG症状に加えて経口ステロイド量、うつ状態があります*8
  • QOLの維持のためにはMGの症状を抑えること、経口ステロイドはできるだけ少量使用すること、様々な情報を入手し主治医と相談、不安を解消する<知ること>が重要であります。
  • 重症筋無力症においては抗補体薬、抗Fc受容体薬 という2種類の生物学的製剤が保険承認されています。従来の治療法で効果不十分な際に使用を検討します。
  • 治療について
    「何のために治療をしているのか」
    「主治医と考え方は合致しているのか」
    「すべての治療選択肢を理解したうえで今の治療を受けているのか」
    を知ることがとても大切です。

*1 仲 真人, 伊藤 和弘 : 聖路加看護大学紀要, 2009, 35, 37-44.

*2 重症筋無力症ガイドライン2022.南江堂, 54

*3 長根百合子: 臨床神経学. 2013; 53: 1299-1302.

*4 Konno S, et al.: PLoS One. 2015; 10: e0126579.

*5 Sekine Y, et al. : Eur J Cardiothorac Surg 2006;29:908-913.

*6 Costello R, et al. : BMJ Open 2017;7:e014603.

*7 Morin C, et al.: Clin Rheumatol. 2015; 34: 2119-2126.

*8 Masuda M, et al.: Muscle Nerve. 2012; 46: 166-173.